食べ放題実施のかっぱ寿司が抱える課題

かっぱ寿司が「食べ放題」を導入して、初日から750分待ちを記録するなど大盛況っぷりを見せています。かっぱ寿司の悲願とも言える集客には成功しましたが、これがビジネスとして成立するかはまた別問題じゃないでしょうか。

結論から言うと、ボクは失敗するだろうと予測してます。

1.オペレーションの課題

1-1.元々オペレーションの難易度が高い

飲食業界の中でも特にオペレーションの難易度が高いと言われているのが、回転寿司(と居酒屋)です。

ファミレスの場合、ハンバーグやステーキといった面倒な料理を提供しなければいけないものの、追加オーダーは比較的少なめ。まだ食べたいけど、追加で頼んだら食べ切れそうにないから辞めておこうって場合も多いので、一品目を作ればとりあえずは安心出来ます。

一方の回転寿司(と居酒屋)は、手間のかかるメニューではありませんが、その分大量製造しなければいけません。一皿単位で自分のお腹の膨れ具合と相談できるので食べやすいですし、注文せずとも流れてくるのでついつい満腹になるまで食べてしまう(皿を取る)という方は多いんじゃないでしょうか。つまり、楽そうに見えても実は非常に手間がかかっているのです。

手間がかかるということは、それだけオペレーションの難易度も上がるということ。回転寿司は、お寿司が流れていて初めて回転寿司を名乗ることが出来るので、何よりも優先すべきことはコンベアのお寿司を製造することです。

しかし、かっぱ寿司のような大規模店舗の場合、満席時には数百人規模のお客様がお食事されるので、コンベアのお寿司を大量に製造してもすぐに空になってしまいます。空にならないように製造スピードは食事スピードを上回らなければいけません。製造スピードが下回った場合、コンベアにお寿司が流れていないのでお客様としては注文するしかなくなります。すると今度は注文も溜まってきます。

担当は、場所(注文担当とコンベア担当)もしくはネタ*1で分かれていると思いますが、上手く回っていればお互い助け合えます。しかし、それが出来ない状況であればオペレーションは崩壊に向かいます。

*1=あくまで考察ですが、ネタは一括で製造している可能性もありますね。まぐろ系担当であれば、注文コンベア関係なしにまぐろ系(中トロ、びんとろ等)はすべて製造するという感じで。

コンベアを優先していると、注文品が混み合いすぎて10分20分待っても届けられない恐れがありますし、
注文品を優先すれば、回転寿司にお寿司が流れていないという非常にシュールな状況になるのでクレームは必須です。

つまり、どちらかを優先することは許されないのです。両方頑張らないといけない。

こうなる前に、何としてでもコンベア上のお寿司を流し続けなければいけません。

1-2.食べ放題はオペレーションが乱れる典型例

ただ、回転寿司は回転率も良いです。(回転だけになんちゃって…(笑))それだけ入れ替わりが激しいので、通常はリスクが分散されます。1皿しか食べていないお客様と20皿食べている人は食事スピードも違いますよね。いろんなスピードのお客様がいるので総合的には安定します。つまり、従業員さえ投入しておけば上記のような事態にはなりません。

でもかっぱ寿司の食べ放題。平日14時になれば一斉にお客様を案内し、一斉にコンベアからお皿を取り、一斉に注文が来るのですよ!? これ、オペレーション崩壊の典型例ですから…。

そうならないようにするには、従業員を出来る限り投入しておくことです。しかし、食べ放題という原価の厳しい中で人件費をどれだけ出せるのかという問題と、人手不足で入れる人が誰もいないという状況が想定できます。現在は20店舗限定なので、近隣の店舗から出来る限りの応援要員を集めることでどうにか持ちこたえている(?)のかもしれませんが、全店舗となるとやはり厳しいと思いますよ。

まあ14時になる前にコンベアにお寿司を超大量に流しておけばしばらく耐えられるかもしれませんが、食べ放題の客層として想定しているのは大食いの人でしょう。じわじわ崩されていきますよ。(というか、超大量には流せません。腐敗が進んではいけませんし、食べ放題なんてただでさえ原価がヤバイのに廃棄を増やせないので。)

もっと問題なのは崩壊したときのリスクです。通常であれば申し訳ございませんで済むかもしれませんが、食べ放題には70分という制限がある。「提供が遅く満足に食事できなかった! 本当はもっと食べられたのに!!」と言われたらどうするんでしょうか。通常のように食べた分だけの請求でしょうか? なんにしろ、顧客満足度低下と客離れは免れませんね。

1-3.崩壊からの立て直しはどうするの?

崩壊したとき、どのように立て直すのかも課題です。

回転寿司だけでなく、焼肉店や居酒屋でも導入されているタブレット端末ですが、よく「ご注文が混み合っています」と表示されて注文できないことがありますよね。注文を受注したところで届けるのが1時間後になってしまっては怒られるので、そもそも受注出来なくしているのです。これは、注文数を減らしてオペレーションを立て直すためには必須の対応です。

でも制限時間のある食べ放題でこの方法を使うのはマズイ。どんどん注文して元を取ろうと思っているのに注文ができないなんてあって良い訳がありません。即クレームに繋がる恐れがあるので、この手は使えないのです。

ただ、オペレーションの立て直しにはもう一つ得策があります。案内の一時停止をすることです。つまり空席はあるけど注文が一定数減るまでお席の案内をしないことで、オペレーションの立て直しが図れます。だけどお察しの通り750分待ちという状況でわざと空席を作るなんてバカげたこと出来るわけがないのです。つまり詰みです。

そんな中で、一つだけ安心できることがあります。それは14時に案内すれば、お会計は70分後の15時10分頃であるということ。一斉にお会計になれば一斉に空席ができます。だけど、片付けは一斉には出来ない。ここから徐々にお客様を入れ替える体制に持っていけばまだ救いはあるかもしれません。というか唯一考えられるのはこれですね。

2.従業員の課題

2-1.確保できるのか?

食べ放題の時間は14時から17時のアイドルタイムです。アイドルタイムと言えば通常は暇になる時間。

今までこの時間はお客様が少ないので、ほんの数人程度のパートさんを確保すれば運営できていましたが、食べ放題となると満席を想定していると思います。であれば、ピークと同じ人数を確保しなければいけません。この時間学生は学校なので、主戦力は主婦層です。しかし、お昼のピークが終わる頃(14時)までしか働けないという主婦の方も多いのでは?

となると、募集するしかありませんよね。集まりますか? 集まりませんよね。時給を上げる必要が出てきます。食べ放題の為に時給を上げて費用対効果はどうなるのでしょう? ボクは数字を持っていないので検証出来ません。

問題はまだあります。本来、アイドルタイム(かっぱ寿司であれば14時―17時頃)というのは夜のピークタイムに向けて仕込みや準備をする時間です。ウェイティング有りの満席状態は、ピークと変わりありませんので、それはすなわちアイドルタイムがなくなることを意味します。つまり夜ピークの準備をするためには、14時―17時に昼ピーク(11時30分―14時頃)以上の人数を投入する必要があります。そうしないと夜のシャリがなくなったりとか色々運営上の問題が発生するはずなので、実質的には今まで以上の人数確保が必要となるのです。

2-2.激務になれば辞める人も出てくる

今までのかっぱ寿司が暇だったとは思わないのですが、食べ放題を実施している店舗は確実に今まで以上に忙しくなっていますよね。忙しくなったのに時給は今までと同じであれば、腑に落ちない従業員もいるでしょうし、時給が上がっても忙しいのが嫌という人だって居ます。前者は時給を上げなければいけませんし、後者はどうしようも出来ないですが、辞められる覚悟は必要です。

なので、結局のところ人件費の問題から逃げることは出来ません。時給を上げるだけでは集まらない時代なので、残ったパート・アルバイトさんの環境は悪化するんじゃないでしょうか。もしこんな状況に陥れば会社の存続に関わります。

2-3.最終的に負担を背負うのは?

でも、一番かわいそうだなと思うのは店長を含めた現場社員だったりします。

思うように集まらなければ、その穴を埋めるのは現場社員。パート・アルバイトが思うように動いてくれずにイライラ。お客様から受けたクレームを処理するのも現場社員。上司からの圧力を受けるのも現場社員。

最終的に大きな負担を背負うのは間違いなく現場社員です。かっぱ寿司の話ではありませんが、以前働いていた会社がこんな感じでしたね。

なので、会社は社員のケアをしっかりしてほしいと思います。

3.一番やるべきことは?

かっぱ寿司が一番やるべきことは、美味しい寿司を提供すること。これが原点であり、頂点です。

ネタにお金をかけるためには、オペレーションの完成度に磨きをかけ、無駄を省くことです。オペレーションの完成度を高めるためには、従業員の定着率を上げて教育を徹底し、ひとりひとりの作業スピードを上げていくしかありません。定着率を上げるためには、適切な賃金と適切な休暇を与え、会社を気に入ってもらうことです。

会社を気に入っている従業員には笑顔が溢れ、お客様への接客態度にも現れます。ネタにも満足、接客にも満足。不満点が無ければリピーターになってくださるお客様も多いでしょう。好循環です。

かっぱ寿司の話ではありませんが、飲食業界に溢れる、動きの遅い新人の疲れきった顔はもう見飽きました。この業界はいい加減、無駄しかない人員の使い捨てを辞めて定着に力を入れてください。

と言っても実際問題、これは不可能に近いです。

飲食大手の多くは、成長が早すぎたのです。出店ラッシュする割に従業員の教育が追いついていない。これから徹底するには、一時的に縮小せざる得ないのです。

業界で先陣を切ったのがモンテローザですが、会社全体で人手不足が深刻化していたために、大量閉店しましたよね。そうやって、周辺店舗をまとめて閉店し、一店舗に集めて教育をし直す余裕を作ったわけです。

まあボクは経営や経済のことは分からないので詳しく書けませんが、モンテローザの件は東洋経済の記事を見ても、「業績不振ではないのか」ということを書かれているように、店舗を減らすことは悪いイメージというのが根強く、なかなかこういったことをしない会社が多いのが現状です。

モンテローザの噂は色々聞きますが、少なくともこの判断は妥当であり、業界全体にも広まってほしいものです。

さいごに

食べ放題は7月14日までの期間限定です。かっぱ寿司は今回の食べ放題をトライアルとしており、今後色々な検討をしていくものだと思います。

集客自体には成功といえますが、どうなんでしょうね。色々問題抱えすぎているような気がします。無謀な賭けに出てしまいましたね…。というかよくやろうと思ったな(笑)

ちなみにボクは、なんでも地道にやるのが一番だと思ってますよ。食べ放題なんかやらなくても再生の道はきっとあります。ヒントは書いたつもりです。(こんな零細ブログ、誰も観ないでしょうが。)